
V2Hは「Vehicle to Home」の略で、そのまま訳せば「車から家へ」。電気自動車に貯まっている電気を、家で使えるようにする設備です。
いちばん分かりやすい価値は、停電時の電源です。家庭用蓄電池の容量が5〜16kWh程度なのに対し、EVの電池は40〜100kWh。桁がひとつ違います。日産リーフでもトヨタbZ4Xでも、満充電なら一般家庭の数日分の電気を積んでいることになります。
ただ、いいことばかりではありません。車が外出していれば使えませんし、機器代と工事費を合わせると200万円を超えることもあります。この記事では、仕組みから注意点まで整理します。
- V2HはEVの電池を家庭用の電源として使うための設備。充電も放電も1台でこなす
- EVの電池容量は40〜100kWh。家庭用蓄電池(5〜16kWh程度)の数倍
- 普通充電コンセント(3kW/6kW)より充電が速いのも利点
- 弱点は車がないと使えないこと。日常的に車で出かける家庭では蓄電池との併用も選択肢
- 国の補助金は個人宅で最大130万円(設備費75万円+工事費55万円)。仙台市は上限20万円
V2Hの仕組み
EVの電池に貯まっているのは直流の電気です。家で使う電気は交流。この変換を担うのがV2H充放電設備で、双方向のパワーコンディショナが入っています。
- 充電:家庭の交流電源を直流に変えてEVへ送る
- 放電:EVの直流電気を交流に変えて家の分電盤へ送る
放電時は、V2Hから分電盤へ電気が流れ込み、家中の電気製品がふだんどおり使えます。太陽光発電がある家なら、昼に発電した電気でEVを充電し、夜にそれを家で使うという循環もつくれます。
できること・できないこと
| できること | できないこと |
|---|---|
| 停電時にEVの電気を家で使う | 車が外出中は使えない |
| EVを普通充電コンセントより速く充電する | V2H対応でない車種では放電できない |
| 夜間の安い電気でEVを充電し、昼に家で使う | 電力会社へ売電することはできない |
| 太陽光の余剰をEVに貯める | 電池を使うほど車の航続距離は減る |
| 電気の使用時間をずらして電気代を抑える | 単独では機能しない(EVが必要) |
蓄電池・普通充電との違い
| V2H | 家庭用蓄電池 | 普通充電コンセント | |
|---|---|---|---|
| 使える容量 | EVの電池(40〜100kWh程度) | 5〜16kWh程度 | ー(充電専用) |
| 家へ給電 | できる | できる | できない |
| EVへの充電速度 | 速い(機種により6kW程度) | ー | 3kWまたは6kW |
| 車が不在のとき | 使えない | 使える | ー |
| 設備の費用 | 大きい | 大きい | 小さい |
| 設置スペース | 駐車位置の近く | 屋外または屋内 | 壁面など |
停電対策として容量を重視するならV2H、いつでも確実に使えることを重視するなら蓄電池。両方を組み合わせる家庭もあります。
V2Hのメリット
1. 非常用電源としての容量が大きい
一般家庭の1日の電気使用量は10〜15kWh程度。EVの電池が60kWhなら、単純計算で4〜6日分になります。実際には車を移動させる分も残しておく必要がありますが、それでも家庭用蓄電池より長く持ちます。
2. 充電が速い
200Vの普通充電コンセント(3kW)で満充電まで20時間近くかかる車も、V2H(6kW程度)なら半分ほどの時間で済みます。毎日乗る方には日常の利便性として効いてきます。
3. 電気代を抑えられる
夜間の安い時間帯にEVへ充電し、昼にその電気を家で使う。太陽光があるなら、昼の余剰をEVに貯めて夜に使う。時間帯別の料金プランと組み合わせると効果が出ます。
4. 太陽光との相性がいい
2026年度のFIT価格は住宅用(10kW未満)で5〜10年目が8.3円/kWh。買う電気より安いため、余剰を売るよりEVに貯めて使うほうが有利です。太陽光と蓄電池の記事でも触れていますが、V2Hも同じ考え方で使えます。
導入前に知っておきたい注意点
1. 車がないと機能しない
これが最大の弱点です。日中は通勤で車が外に出ている家庭では、停電が昼間に起きても家に電源がありません。この点を許容できるかどうかが判断の分かれ目になります。
2. 電池の劣化
充放電を繰り返せば、EVの電池は少しずつ劣化します。走行のための電池を家庭用にも使うことになるので、車のバッテリー保証の条件も確認しておいたほうがいいでしょう。
3. 設置スペースが限られる
V2Hは駐車位置の近くに設置する必要があり、ケーブルが車の給電口まで届く位置でなければなりません。カーポートの柱、隣地との境界、既存の外構。実際に測ると、置ける場所は1〜2か所に絞られることがほとんどです。
4. 分電盤の状況によっては追加工事が必要
V2Hは200Vの専用回路が要ります。分電盤に空きがなければ増設が必要ですし、全負荷対応にするなら切替盤も入ります。分電盤の交換が同時に必要になることもあります。
5. 全負荷型か特定負荷型か
停電時に家中の電気を使えるのが全負荷型、あらかじめ決めた回路だけ使えるのが特定負荷型です。200Vのエアコンやエコキュートを停電時に使いたいなら全負荷型が必要になります。
費用の目安と補助金
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| V2H本体 | 80万〜160万円程度 |
| 設置工事費 | 20万〜50万円程度 |
| 合計 | 100万〜210万円程度 |
本体価格は機種と出力(3kW/6kW)、全負荷対応かどうかで幅があります。工事費は分電盤からの距離と配線ルート次第です。
補助金
| 制度 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 国 V2H充放電設備の導入補助金 | 設備費:購入費(税抜)の1/2以内かつ型式ごとの上限(多くは75万円) 工事費:個人宅は上限55万円 | 交付申請期間は2026年7月17日〜9月30日17時 |
| 宮城県 スマートエネルギー住宅普及促進事業 | 4万円/件 | 工事完了後に申請。受付は年3回、各10日前後 |
| 仙台市 家庭向けV2H充放電設備設置費補助金 | 補助対象経費の1/3(上限20万円) | 予算240万円。工事着手前に申請。国・県と併用可 |
国の補助金は交付決定を受けてから発注・工事開始が要件です。仙台市も工事着手前の申請が条件。詳しくはV2Hの補助金の記事で整理しています。
機種選びのポイント
- 出力:3kWか6kW程度か。充電時間と、停電時に同時に使える電力量に効きます
- 全負荷/特定負荷:停電時にどこまで使いたいか
- 太陽光との連携:太陽光がある(入れる予定がある)なら、連携できる機種かを確認
- 本体サイズと設置方式:置ける場所に入るか。壁掛けか据置か
- 対応車種:保有している(購入予定の)EVに対応しているか
- 補助対象の型式か:国の補助金は型式ごとに上限額が決まっています
設置場所の条件
現地調査で見ているのは次の点です。
- 駐車したときに、ケーブルが給電口まで届くか。車種によって給電口の位置が違います
- 本体の設置に必要な離隔距離が取れるか。放熱と保守のためのスペースです
- 基礎を打てるか。据置型は基礎工事が必要です
- 分電盤からの配線ルート。壁を貫通するか、外壁に沿わせるか、地中に埋めるか
- 積雪と風の当たり方。宮城県内でも地域差があります
- 車の出し入れの動線を妨げないか
V2Hのご相談でいちばん多いのは「うちに置けますか?」という質問です。カタログの本体寸法だけでは判断できません。ケーブルの長さ、給電口の位置、車の停め方。実際に測ってみて初めて分かります。
それと、分電盤の状況。V2Hは200Vの専用回路が必要ですし、全負荷対応にするなら切替盤も入ります。ここを見ずに見積りを出すと、あとから電気工事が増える話になりがちです。
配線をどう通すかで、費用も見た目も変わります。電気は見えなくなる部分がほとんどですが、外の配管と本体は毎日目に入りますから、見えるところは見栄えよく仕上げたいと思っています。
置ける場所は1〜2か所に絞られます
V2Hは、蓄電池と違って車を停める場所に縛られる設備です。そのため、どこに置くかがほぼ最初に決まります。そこから配線ルートが決まり、工事費が決まる。この順番になります。
「補助金があるうちに」と急がれる方も多いのですが、締切が近いときほど現地調査を先に済ませておいたほうが、結果的に早く進みます。置けるかどうか、いくらかかるか。それが分かってから申請の準備に入ると安心です。
Frawは仙台を拠点に、宮城県全域と東北近郊でV2H・EV充電設備・蓄電池の設置に対応しています。第一種電気工事士として低圧から高圧まで施工可能です。太陽光・蓄電池・V2Hの施工内容はこちら。
よくある質問
V2Hとは何ですか?
Vehicle to Homeの略で、電気自動車に貯まっている電気を家庭で使えるようにする設備です。双方向のパワーコンディショナが入っており、家からEVへの充電と、EVから家への給電の両方ができます。EVの電池容量は40〜100kWh程度で、家庭用蓄電池(5〜16kWh程度)の数倍にあたります。
V2Hと家庭用蓄電池はどちらがいいですか?
容量を重視するならV2H、いつでも確実に使えることを重視するなら蓄電池です。V2Hは容量が大きい一方、車が外出中は使えません。日中に車で出かける家庭では、停電が昼間に起きると家に電源がなくなります。両方を組み合わせる選択もあります。
どのEVでもV2Hは使えますか?
充電はできても放電に対応していない車種があります。また国の補助金では、車両と充放電設備の両方が補助対象製品として登録されていることを要件にする制度もあります。V2Hの導入を前提に車を選ぶなら、対応の可否を必ず確認してください。
V2Hの費用はどのくらいですか?
本体が80万〜160万円程度、設置工事費が20万〜50万円程度で、合計100万〜210万円程度が目安です。本体価格は出力(3kWか6kW程度か)と全負荷対応かどうかで幅があり、工事費は分電盤からの距離と配線ルートで変わります。
V2Hを使うとEVのバッテリーは劣化しますか?
充放電を繰り返せば電池は少しずつ劣化します。走行用の電池を家庭用にも使うことになるため、車のバッテリー保証の条件もあわせて確認しておくことをおすすめします。
V2Hで売電はできますか?
できません。V2Hは家庭内で電気を使うための設備で、EVに貯めた電気を電力会社へ売ることはできません。太陽光発電の余剰電力を売電する仕組みとは別のものです。
まとめ
V2Hは、EVの大きな電池を家の電源として使えるようにする設備です。停電時の容量では家庭用蓄電池を大きく上回り、普通充電コンセントより充電も速い。太陽光がある家なら、余剰を貯めて夜に使う循環もつくれます。
弱点は、車がないと使えないこと。日中に車で出かける家庭では、停電のタイミング次第で機能しません。ここを許容できるかが判断の分かれ目です。
費用は本体と工事で100万〜210万円程度。国の補助金は個人宅で最大130万円、仙台市は上限20万円で国・県との併用も可能です。どちらも交付決定前の着工は対象外なので、契約前にご相談ください。
- 令和7年度補正予算 V2H充放電設備の導入補助金(一般社団法人次世代自動車振興センター)
- 令和8年度スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金(宮城県)
- 家庭向けV2H充放電設備設置費補助金(仙台市)
- 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(調達価格等算定委員会・経済産業省)
補助制度の内容・予算・受付状況は変更されることがあります。申請前に必ず各制度の公式サイトおよび窓口で最新情報をご確認ください。